2012年6月2日土曜日

精神病理論(鬱・不安障害・解離性障害・統合失調症・自閉症など): 岩崎純一のブログ


■十二指腸潰瘍の「なりやすさ」

 最近の『Nature Genetics』に掲載された東大医科学研究所の研究論文によると、血液型がO・A・B・AB型の順に十二指腸潰瘍になりやすく、O型の人はA型の人よりも1.5倍ほど十二指腸潰瘍になりやすいという調査結果が出たようである。また、胃癌の「なりやすさ」の指標として使われるPSCAという胃癌リスク遺伝子がC型の人は、T型の人に比べて、胃癌リスクは半分であるのに、十二指腸潰瘍リスクは2倍以上という結果になったようである。

 これについて、東大医科研は、「O型の血液型遺伝子を持つ人の腸は、十二指腸潰瘍の原因となるヘリコバクター・ピロリ菌が住みやすいから」だと説明している。また、「A型人間は神経質である」といった血液型占いに警鐘を鳴らしてもいる。

(ちなみに、私はB型である。B型の男性は、血液型占いではあま りよく思われていないようで、「大雑把で片付けが下手」という評価が定番のようだが、なぜか私は整理・整頓が好きな人間で、一番大好きな家事は皿洗いである。)

 この十二指腸潰瘍及びよく似た胃潰瘍の「二大消化性潰瘍」について、いつも私が興味深く思っているのは、「どんなに精神的ストレスを受けてもこれらに罹患しない」人がいることも確実であるのに、「これらの疾患の主要因が精神的ストレスである」ことも確実であるという点である。およそ欧米と日本で出ている研究結果を足し合わせると、どうしてもそういう言い方になってしまう。

 だから、鬱病や社交不安障害やパニック障害の人がこれらの消化性潰瘍を併発していることがある。消化性潰瘍は、一応は「精神の疾患」ではなく「身体の疾患」と� �うことになっていて、疾病分類として有名なICD-10でもそのようになっているので、私の以下のページにもリストアップしていないが、このページの「皆様との交流」に挙げた何人かの方は、消化性潰瘍に罹患している。

 精神的ストレスが主要因という点では、消化性潰瘍は偏頭痛に似ている気がするが、これについても、「ある人がストレスを受けた時に、消化性潰瘍になりやすいか偏頭痛になりやすいかは、ある程度は血液の構造の差異などの遺伝的差異によって決定されている」ということが言えるのだろう。

 だから、「同じだけの心のストレスを受けた時に、まず十二指腸潰瘍という形に現れやすいのは、O型である」ということだけは言えるのだろう。

 もちろん、「精神的ストレスを受けると、体内でピ� ��リ菌が発生する」などという超常現象が起きているわけではない。それに、「ピロリ菌が全くいない環境下でも、精神的ストレスを過度に受けると、十二指腸潰瘍になることがある」わけであるから、「ピロリ菌は十二指腸潰瘍のONスイッチとなる場合もある」という言い方しかできないわけである。

 私の素人目で見ても、消化性潰瘍は、飲酒と喫煙という「生活悪習慣」による発症に心当たりがない場合は、ほとんどが精神的ストレスによる発症ではなかろうかとさえ思う。

■統合失調症者の「病理回避能力」

 今回のO型とA型の差のように、1.5倍くらいの差なら、いくらでも実験の方法・環境によってまだ覆りそうな危うさがあるが、中には、いくら反証しようにもしがたい心身の相関関係というのもある。